(以下オフィシャルHPより転載しております) Lydianという店について語ることは、そのままジャズライブの現状と、それを変えて行ける可能性があるのかということにつながるものだと考えます。About Usにしてはとんでもなく長いですが、少しでも多くのお客様にライブを楽しんで帰っていただきたいか、そのためにどういうブッキングをしてどういう環境を提供したいかについて書きました。 ジャ...
(以下オフィシャルHPより転載しております)
Lydianという店について語ることは、そのままジャズライブの現状と、それを変えて行ける可能性があるのかということにつながるものだと考えます。About Usにしてはとんでもなく長いですが、少しでも多くのお客様にライブを楽しんで帰っていただきたいか、そのためにどういうブッキングをしてどういう環境を提供したいかについて書きました。
ジャズライブの現状
ご存知の方も多いと思いますし、残念なことに「当たり前の風景」になっている面もあるのですが、ジャズのライブに足を運んで頂けるお客様はとても少ないのが現状です。毎日、高い音楽性、技術を持ったプロのジャズミュージシャンが多くの店で演奏していますが、えっと驚くほどリスナーが少ないことが珍しくありません。
これまで私が聴いたライブの中で最高の演奏はピアニストKMさんのソロ演奏でした。デューク・エリントンの組曲やスタンダードを弾く音のすべてが美しく、歌っていて、ベースもドラムもいないにもかかわらず最高にスイングしていました。ピアノが発するすべての音を感じ取ることができて(こういうことは滅多にありません)、至福の体験でした。しかし、リスナーは8人でした。
ソロは人を呼びにくいと言われていること、会場が都心から遠かったことなど色々な要因はあると思いますが、KMさんの演奏は高度な技術に裏打ちされていて、アドリブはメロディアスな部分と尖った部分の両方を持ち、強力なビート感があってスイングする、まさに私にとっては「聴き惚れる」ジャズでした。その素晴らしい演奏を聴く体験を8人しか経験できなかったというのはあまりにもったいない!
海外のビッグネーム、テレビに出演するような一部の有名なミュージシャン、大きなジャズイベントなどでは、多くの人が聴きに行きますが、これらは例外的であって、ライブハウス、ライブバー、クラブなどでの生演奏では20人のお客様がいらっしゃれば、多い方だという印象です。
一体なぜでしょうか?確かにジャズは抽象度の高い音楽ですから、聴く耳を選ぶ傾向があるのは事実ですが、日常CDや動画でジャズを聴いている人は多いですし、ジャズという音楽に対するカッコよさのイメージは今でも色あせていないと思います。にもかかわらずジャズライブに行こうという人が少ないのは、行くためのコストと時間に見合った満足感が得られない可能性が高いからです。私に言わせれば、これはライブを提供する店側にも責任があるように思えますし、ミュージシャンサイドでも、もっとできることがあるように感じます。
例えば、ジャズライブの場合、リスナーが聴きたい曲が必ずしも演奏されないことが多いのはなぜでしょうか?なぜ、演奏する曲が前もって分からず、曲の紹介すらない場合があるのはなぜでしょうか?なぜ開演時間が8時などと遅く、さらに開演時間より何分も過ぎないと演奏が始まらないことが多いのでしょうか?そもそも、没頭してジャズを聴きたいリスナーにとって、ナイフとフォークで食べるレストラン形式は向いているでしょうか?フードがマストだったり、何度も注文を聞かれることはお客様にとって気にならないでしょうか?
私から見ると、お客様がジャズライブ聴きに来られて満足して帰っていただく上でマイナスとなる要素が、現状では色々あるにもかかわらず放置されているように思えるのです。以下、そうした要素について考えると同時に、私からの提案を書いてみます。
Lydianの提案するジャズライブ
1 ライブでの演奏曲目
ジャズライブで演奏される曲は大きく分けると、スタンダードと演奏者が作曲したオリジナルのどちらかということになるでしょう。どちらがが楽しめるかについて簡単な答えはなく、リスナーの好みということになるのですが、オリジナル中心でもスタンダード中心の選曲でも、その曲がリスナーの耳にはまる魅力を持っていれば、テーマを聴くだけでも楽しめますし、アドリブ部分でも大いに楽しめる可能性があります。逆に、曲が面白く聴こえないリスナーにとってはライブの満足度は落ちてしまいます。
オリジナル、スタンダードそれぞれに、魅力のポイントや聴き方はあると思いますが、それは別のコラムに譲るとして、ここでは曲目をある程度事前にお知らせすることができないかという視点で書いて見ます。
私がライブを聴きに行く時、今日はどんな曲を演奏してくれるだろうと考え、スタンダードをある程度演奏するミュージシャンの場合、自分の知っている曲が演奏されると楽しめます。オリジナル中心に演奏するミュージシャンの場合でも、以前のライブやCDで良い曲だと感じた曲が演奏されると、すぐに曲の世界に入って行けるということはあります。もちろん、初めて聴く曲でもすぐにその世界に入っていって楽しめることもありますが、一般的には曲のコード進行やメロディーに馴染みがある方が楽しめる確率は高いと言えるでしょう。
クラシックの場合だと、スケジュールがネットなどで掲載される時点で演奏曲目が(予定ではあっても)必ず書いてありますよね。リスナーにとって当然クラシック楽曲の好みはありますから、予定プログラムを見て、この曲が演奏されるなら聴きに行きたいというインセンティブに当然なります。
ジャズライブでは曲名が前もって告知されていることがないのは、「ジャズに名演奏あって名曲なし」という“名言”に代表されるように、「何を演奏するかよりどう演奏するかが大事」という考え方が根強くあるためだと思います。確かに、譜面通りに演奏するクラシックに比べて多くのジャズはコードという枠組みの中でどのように演奏するかが勝負ですから、スタンダードの名曲All the things you areを取り上げたからといって良いパフォーマンスになるとは限りません。その意味で、名曲を演奏することが良いライブの十分条件ではないのは確かです。
ただ、同じミュージシャンのライブが二つあったとして、一つはスタンダード中心または作曲に定評があるミュージシャンのオリジナルという選曲、もう一つは初めて聴く曲でしかもコード(またはモード)が一つだけ、あるいは初めて聴くリスナーの耳には複雑過ぎてわけがわからない印象の曲ばかりという状況を考えてみてください。いささか極端な設定ですが、ほとんどのリスナーは前者を選ぶでしょう。良い選曲と、それを事前に告知するということは、良いライブの十分条件ではなくても必要条件の一つだと私は考えます。
ですからLydianでは、ミュージシャンと事前に相談させていただいて、スタンダードでもオリジナルでも、何曲かを「演奏予定」として店のスケジュールに掲載させていただきたいと考えています。その日の気分で演奏したい曲というのもあるでしょうから、全部ではなくてもいいのです。2曲でも3曲でも「演奏予定」としてスケジュールに載せることで(もう少し多いことを期待しますが)、「その曲を演奏してくれるなら行こうかな」というお客様のインセンティブになると考えます。
もちろん、ミュージシャンと事前に相談して趣旨を理解していただけることが大前提となりますが、CDには曲名クレジットがあるのにライブでは事前に告知しないという理由はないと考えます。CDでもライブでも、買うか行くかを決めるのは、「自分にとってどれだけ心地よい音楽を楽しめるだろうか」という理由だけだと思うからです。
2 開演時間
ジャズライブの開演時間は19:30~20:00という場合が多く、平均すると19:45くらいでしょうか。ただ、最近は長時間勤務をなくす方向に明らかに動いていますし、開演時間が遅いとそれまで時間をつぶす必要のあるお客様も多いのではないかと思います。自分が会社勤めをしていた時にそうでしたから。18時とか18時半に会社を出られましたが、20時が演奏開始だとお茶でも飲んで時間をつぶすことになるのですが、そのためにカフェを探したり飲みたくないコーヒーを飲むのは正直面倒でした。
それに、開演時間が遅いと当然演奏終了が遅くなるので、帰宅も遅い時間になります。8時開演だとアンコールまで含めて終了するのが10時半を過ぎることもあり、帰宅に一時間かかると11時半ということになります。そこから食事したり風呂に入ったりすると就寝時間は1時になったりするので、翌日仕事があると、結構辛いものがあります。カフェで時間をつぶしている時、もっと早く始めてくれればなあとよく思ったものです。
しかも、ジャズライブは店のHPに書いている開演時間に始まらないことも多く、15分位過ぎてから始まることもしばしばあります。これではせっかく開演時間に合わせて行く意味がありませんよね。
Lydianは開演時間を19時にします。色々な方に相談しましたが、リスナーはほとんど全員その方がいいと言いました。広告代理店の長時間残業の件もあり、全国的にこれからさらに退社時間が早くなると思いますし、19時ジャストから演奏を開始します。18時に退社するお客様でもさほど時間をつぶさずに来店頂けると思います。
・18:00開店
・19:00開演
・1stステージ:19:00~20:00(60分間)
・インターバル;30分
・2ndステージ:20:30~21:30(60分間)
・Jazz Cafe/Bar(ライブのない日) 14:00~22:30
3 交流タイム
21:30あたりで演奏が終了した後どうするか?ここでお帰りになって明日に備えるもよし、もう少しお友達同士で杯を重ねていただくのも大歓迎ですが、Lydianではその後お客様とミュージシャンの交流タイムを提供しようと考えています。演奏終了後、一旦ミュージシャンは楽屋に引き上げて一休みしますが、その後は客席後方の丸テーブルに現れるはずです。
ジャズライブを聴きに来たお客様にとって、ミュージシャンは憧れの的です。できれば少しお話したいと思うお客様も多いと思います。通常は楽屋に入って出てこないか、ミュージシャン同士がテーブルに固まっていることが多いですが、これだとお客様は話しかけにくいですよね。一言、「素晴らしい演奏でした」と伝えたくても難しい。一方ミュージシャン側はお客様の反応を聴きたいですし、褒められれば素直に嬉しいものです。両者が気軽にお話できる場を作りたいというのが私の願いです。もちろん、それが苦手なミュージシャンもいますし、演奏後は疲れ果てているかもしれませんから、毎回とはいかないかもしれませんね。
4 お酒とフード
Lydianはワインと日本酒にこだわります。銘柄にこだわるだけではなく、グラスでも常においしく飲んで頂けるよう管理にもこだわります。ワンドリンクはマストでお願いしていますが、ライブの間飲むとしても後1杯でしょう。1杯か2杯だからこそ、おいしく飲んでいただきたいので、いつでも美味しいワイン、日本酒(氷温で提供します)を飲んで頂けるように努力したいです。
フードについてですが、シリアスなジャズにリスナーが没頭して楽しもうと思った時、ナイフとフォークを使った食事は必ずしも合わないのではないかと思っています。実際、ジャズライブを提供する多くの店がレストラン的な料理を提供していますが、真剣に聴かせるタイプのインストミュージシャンのライブの時は、ドリンクだけのお客様の方が多いように思います。
ただ、何もないとお腹が空くのも事実です。レストラン形式のお店のフードは決して安くないので、多くのリスナーは直前にファストフードでも食べるか、あるいは帰宅するまで我慢しています。これはちょっぴり寂しいので、Lydianでは小腹を満たせる軽食をご用意します。小さい皿に乗せてフォーク1本で(手づかみもありだと思います)食べられるキッシュ(洋酒用も冷酒用も)、おにぎらずどをショーケースに並べてありますので、ドリンク注文の際でもいつでも申し付け下さい。そして、演奏に集中して下さい。